2024.05.06.UP
タイム・トラベル
こんにちは。
ディレクターチームの中尾です。
前回のブログでは旅行について書きました。
今回は以前に記載した通りヴィンテージスカジャンの補修について書こうと思ったのですが、まずはスカジャンとは何ぞやと言うところから書きたいと思います。
時は戦後間もない頃まで遡りますが、日本に駐留していた米兵たちが記念に土産物(スーベニア)として刺繍入りのジャンパーを購入することから始まりました。
そのため当初は『刺繍ジャンパー』や『スーベニアジャケット』などと呼ばれていました。
そんな土産物であった刺繍ジャンパーは、ベースボールジャケットを模して、そこにオリエンタルな刺繍を施し、シルク生地に似たアセテートを使用して作られました。
刺繍ジャンパーのフロントにはジッパーを用いることとなりましたが、それ以前の日本ではジッパーを用いたジャケットは、ほとんど流通しておらず刺繍ジャンパーが流通することによってジッパー生産量が増え、それが今にちの世界で約半数以上のシェアを占めるに至った礎となったといっても過言ではありません。
ヴィンテージのスカジャンには今では現存しないジッパー製作会社のものもあり、その当時に日本のジッパー生産量が増えていったことを垣間見ることができます。
そんな『スカジャン』は、戦後貧しい日本人が知恵と工夫で独自に考えだした日本発祥で唯一の洋服として誇るべきファッションアイテムだと思っています。
それからジャンパーへ施す刺繍は鷹・虎・龍や日本地図・舞妓などアメリカ人がイメージしやすい日本を象徴するものが多かったのですが、朝鮮戦争が始まると韓国の米軍基地から発注された朝鮮地図を施したものなども作られて行き、それに端を発し各国の基地所在地をモチーフとしたものが生まれていきました。
そして日本発祥のスーベニアジャケットはヨーロッパなどでも模倣されることになり世界各地の基地で販売されるまでに至りましたが、日本でのスーベニアジャケット製作は需要低下に伴い1960年代には終わることとなりました。
古いものの定義付けとして30年以上前のものはヴィンテージ、100年以上前のものはアンティークなどと言われるのですが、スカジャンに関しては1960年代までに作られたものがヴィンテージに当たります。
それは1970年代頃から丈夫な化繊が作られ、大量生産によって希少ではなくなってしまったからです。
1960年代のものですと60年以上前のものとなり、状態がかなり良いものを見つけるのは困難ですし、あったとしても目が飛び出るほど高額で手が出せません。
そのため多少状態が悪いものでも、これから長く着用していくために知り合いのヴィンテージ洋服直しのプロに頼んでいます。
次回はヴィンテージスカジャンのどんなところが悪くなっていて、どの様に直すか書こうと思います。
では、また次回の講釈で